#039 滋賀は馬術大国!馬とともに挑むスポーツ「馬術」の魅力とは?

馬術

今、滋賀の「馬術」が熱いってご存知ですか?
日本に二つしかないJRA(日本中央競馬会)のトレーニングセンターがある栗東市は「馬のまち」として全国的に有名ですが、実は滋賀県は「競馬」だけでなく、「馬術」も盛り上がっています!

2024年の国スポでは、滋賀県勢が大躍進!パリオリンピック総合馬術団体で銅メダルを獲得した「初老ジャパン」の北島隆三選手も滋賀にゆかりがあるんです。

といっても誰にでも馴染みがあるスポーツではないため、競技をよく知らない人も多いのでは?
JRA騎手として活躍しながら、馬術でも結果を出している小牧加矢太選手に、競技の魅力を聞いてきました。

馬術は、馬と人の「絆」が試されるスポーツ

2024年のパリオリンピックで初老ジャパンが銅メダルを獲得し、一躍、脚光を浴びた「馬術」。
名前は知っていても、どんな競技かよく分かってない人も多いのではないでしょうか。

小牧選手

馬術は、馬と人間が一体となって技を競う競技です。馬を使ったスポーツは、古代オリンピックからすでに行われていて、昔から馬は人間の良きパートナーだったよう。

現在は主に『障害』『馬場』『総合』の3種目に分けられており、定められたコースをいかに減点を少なく、美しく走るかが競われます。

男女が同じステージで競い合える数少ないスポーツで、幅広い年齢層の選手がいることも特徴。

馬術の本場であるヨーロッパでは人気のあるスポーツですが、日本では馬に乗る環境が少ないため、まだメジャーな競技とは言えません。

乗馬苑馬場

けれど滋賀県は、JRAの栗東トレーニングセンターをはじめ、県内に牧場や馬の関連施設も多いため、馬と関わる人や機会も多いんです。

騎手だった父の背中を追い、騎手となった小牧加矢太選手もその一人。

小牧選手が幼少期に練習場として使っていた、JRA栗東トレーニングセンター内にある「乗馬苑」で話を聞きました。

競馬とどう違う? JRA騎手が語る「馬術」の奥深さ

佐賀国スポ 競技写真

(写真提供:小牧加矢太選手)


JRA障害レースの現役ジョッキーとして活躍する傍ら、2024年に行われた「SAGA2024国スポ」に選手として出場し、見事優勝を果たした小牧選手。

小牧選手だからこそ分かる、「競馬」と「馬術」の違いや、競技の見どころを聞いてみました。

小牧選手インタビュー

「競馬は多頭数で行うレース。ゴール直前の躍動感や競り合いが見ている人を興奮させると思いますし、騎乗している方も競り合いを制して勝つのが面白いところです。

一方、馬術は、馬を育てるところから始まるスポーツ。僕も5年ほど連れ添った馬がいましたが、普段から馬の世話をし、お互いのことを知り絆を強くしていく。まさに、人馬一体となって挑む競技です。競技も1頭ずつ走るので、競技者だけ注目して観戦できます。そういった面から、馬と人の絆をより感じてもらえると思います」。

馬を世話する様子

競馬では馬の能力が勝敗の鍵を握ることが多い一方、馬術では馬とのコミュニケーションによってその差を補うことができます。

「馬術って、上手くなるまで果てしない競技なんです。非日常の動きだから、普段使わない筋肉を使う。上手くなりたかったら練習するしかないけど、自分一人で練習することもできない。だからこそ、日々馬とコンタクトをとって様子を観察し、馬と呼吸を合わせることが大事になります」。

滋賀の馬術が全国レベル!?国スポでの快挙とは

昨年の佐賀国スポの馬術競技では、4名が優勝、総勢15名が入賞し、滋賀県勢が圧倒的な強さで男女総合優勝を達成しました!

佐賀国スポ 表彰式

(写真提供:小牧加矢太選手)


「国スポは、滋賀県が所有する馬に乗らせてもらったんですけど、すごくいい馬で。オリンピック代表選手とも一緒に競いましたが、勝てて嬉しかったです。

国スポに一緒に出場した若い選手たちもすごく意識が高かった。普段から県有馬を管理している滋賀県乗馬連盟の皆さんはじめ、県や関係者が一体となって馬術競技の振興に取り組んだ結果だと感じますね」。

乗馬苑

実は取材場所となった乗馬苑を練習拠点にしている栗東高校馬術部も、2024年インターハイで全国制覇を遂げています。

滋賀の馬術のレベルが全国トップクラスにまでなってきた背景には、2025年秋に滋賀で開催される「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」があります。
県内の乗馬クラブが加盟する滋賀県乗馬連盟では、地元開催の国スポでの総合優勝を目指して、約5年前から県とタッグを組み、ジュニア選手の育成や競技馬の強化に取り組んできました。

特にこれまで弱点となっていた馬場馬術に力を入れて選手を強化。その成果もあり、佐賀国スポでは、JRAの現役調教師である池添学選手とその娘の桃花選手は、親子で入賞を果たしました。

「県有馬を管理してくれてる水口乗馬クラブ代表の谷口さんは国スポにも出場する選手兼指導者。谷口さんをはじめとする滋賀県乗馬連盟の熱心な取り組みが実って、滋賀の馬術の底上げができたんだと思います」。

馬術は選手個人の体力や技術だけで結果が決まる競技ではないだけに、こうした長年の取り組みが、滋賀の国スポでまさに花を開こうとしています。

馬術は特別なスポーツじゃない

小牧選手 飛越

取材時には乗馬苑で美しい飛越(ひえつ)を見せてくれた小牧選手。
地元滋賀での国スポにも出場したいと意気込みます。JRA騎手としても活躍し、練習時間も限られる中、なぜ国スポへの出場を決意したのでしょうか?

小牧選手

「馬に乗る基本は馬術に詰まっているんです。僕が騎手の夢を諦めそうになった時も、めげずに踏ん張れたのは馬術があったおかげ。
ヨーロッパでは、小さい子も普通に馬に乗ってるんですよ。庭で馬を飼っている家庭もあったり、馬との距離が近い。日本でも、『ウマ娘』が流行ったり、競馬は幅広い年代にファンが増えて、身近になってきていると思います。
僕が馬術を続けることで、競馬ファンにも馬術の世界を知ってほしい。国スポで、滋賀の馬術をもっと盛り上げたいですね!」。

小牧選手

ジャンプの美しさや技術だけでなく、馬と人の深い信頼関係こそが馬術の魅力。
馬と一体となって競技に挑む緊張感とともに、一緒に過ごす時間そのものが癒しとなり、心をリフレッシュできる側面もあります。

馬術は競技だけでなく趣味として楽しめる、多面性を持ったスポーツです。県内には乗馬体験ができる施設も多いので、気になる方はぜひその魅力を感じてみてください。

そして、2025年の国スポも、滋賀選手団に熱い声援を届けましょう!

(文・福本明子/撮影・辻村耕司)

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