#033 滋賀にお相撲さんがやって来た!熱狂の「大相撲 大津場所」をレポートします

大相撲 大津場所

「滋賀ダイハツアリーナ」の体育館に土俵が登場!その土俵には、色鮮やかな化粧廻しをつけたお相撲さんがずらりと並び、圧巻の光景が広がっています。

そう、ここは大相撲の世界。「秋巡業 大相撲 大津場所」の一幕です。横綱や大関などの有名力士との距離が近く、地元出身力士にも直接声援が届けられる巡業は、本場所とは違う特別な楽しみがいっぱい。お相撲さんの“大銀杏(おおいちょう)”を結う「髪結い実演」や、コミカルに相撲の禁じ手を紹介する「初切(しょっきり)」など、巡業だけの特別な催しも行われた「大相撲 大津場所」の様子をレポートします!

すぐ目の前にお相撲さんが!

滋賀ダイハツアリーナ

秋晴れの「滋賀ダイハツアリーナ」に、色とりどりののぼり旗が並びました。5年ぶりとなる「大津場所」の開幕です。相撲ファンには待ちに待った日。アリーナには、朝からたくさんの人が詰めかけました。

大相撲はテレビ中継される年6回の「本場所」が有名ですが、それ以外にも、年間60日以上、全国各地で巡業が行われています。「大津場所」もその一つです。

会場内のお相撲さん

館内に入ると、観客のすぐ脇を、のっし、のっしとお相撲さんが!間近で見るその大きさは、すごい迫力です。握手や写真撮影に応じてもらえたり、タイミングが合えばサインももらえたりと、観客の興奮する声があちこちから聞こえてきます。
観客とお相撲さんとの距離の近さが、地方巡業の魅力!取組が始まる前から、相撲の世界に引き込まれます。

四股名

横綱「照ノ富士」に、大関「霧島」、「貴景勝」と有名力士の名前がずらり!豪華メンバーの四股名を眺めているだけでもわくわくしてきます。

今回は、滋賀県出身の力士2人も参加。大津市出身の「鳰の湖(におのうみ)」と、近江八幡市出身の「豪ノ湖(ごうのうみ)」です。2人の所属部屋は違いますが、どちらも、元横綱「北の湖」と同じく、「湖」を「うみ」と読ませるのが特徴です。滋賀らしさが光っていますね。

力士ふれあい会

「力士ふれあい会」でサインに応じていたのは鳰の湖。地元での巡業開催はやはり思い入れもひとしおで、長蛇の列にも、一人ひとりに丁寧に応対する姿が印象的でした。

公開稽古

滋賀出身力士の2人が土俵に上がったのは「公開稽古」。稽古と言っても、真剣そのもの。体重150㎏以上もある大きな身体が激しくぶつかり合う様は迫力満点で、会場はどんどん熱気に包まれていきます。

豪の湖取組

豪ノ湖の取組順が回ってくると、場内はひときわ大きな声援が飛び交いました。激しい当たりから、力強い突っ張りを繰り出し、相手を制すると大喝采!

鳰の湖取組

鳰の湖と大辻の一戦。素早い動きで相手をいなした鳰の湖が、そのまま相手を土俵の外まで押し出しました。技ありの取組に惜しみない拍手が送られました。

巡業でしか味わえない相撲の楽しみ方

髪結い

巡業では、本場所では見られない催しがあります。その一つがお相撲さんのまげ結いの実演です。今回は人気力士の一人、正代(しょうだい)の「大銀杏」を床山(とこやま)の床好さんが土俵上で結い上げます。「大銀杏」は、結えるようになるのに5~10年かかると言われる、まさに職人技。力士一人ひとりの髪質やくせを読みながら、美しく結い上げる日本の伝統技術です。

相撲甚句

続いて、土俵上で行われたのは「相撲甚句(すもうじんく)」。化粧廻しを締めた6人の美声力士が順に歌を披露します。「勝てば極楽~、負ければ地獄よ…」「遠い故郷を偲ぶたび、熱い涙がついほろり」など、相撲ならではの歌詞が心に沁みます。

初切

気分一転、会場を笑いで沸かせたのは「初切(しょっきり)」です。2人の力士が、禁じ手や珍しい決まり手をコミカルに紹介します。アクロバティックな動きも取り入れながら、まるでコントのような掛け合いに、観客が引き込まれていきます。

綱締実演

横綱・照ノ富士が登場した「綱締実演」。横綱だけが締めることを許される「綱」を6人がかりで締めていきます。攻めの型を表す 「雲竜型(うんりゅうがた) 」と、守りの型を表す「不知火型(しらぬいがた)」の2種類の型がありますが、照ノ富士は輪が2つある「不知火型(しらぬいがた)」です。

照ノ富士

相撲の世界で脈々と受け継がれてきた伝統文化に、楽しく触れられるのが巡業の魅力です。

目の前で繰り広げられる大迫力の取組

土俵入り

催しが終わると、幕内力士の土俵入りです。東と西から、化粧廻しをつけた人気力士たちが次々に登場すると、「待ってました!」「頑張れー!」と熱い声援が。幕内力士の雄姿に、観客は大興奮です。

照ノ富士の土俵入り

幕内力士の次は、2人の力士と太刀持ちの力士を従えて、ついに横綱・照ノ富士の土俵入りです。土俵上で照ノ富士は、勇壮な四股を披露。四股を踏むごとに、観客から「よいしょー!」と大きな掛け声が起こります。ひとりで、会場の雰囲気を一気に変えてしまう、これが横綱の貫禄です。

取組

横綱土俵入り後は、結びの一番まで、幕内力士による白熱した取組が行われました。行司の呼び出しから始まり、両者がにらみを利かせる仕切りの緊張感。「待ったなし!」の掛け声がかかり、一気に激しい取組が始まります。廻しの奪い合い、押し合い、「のこった、のこった!」と土俵際の粘り…。”生”の取組に、ハラハラ、ドキドキが止まりません。間近で見た「タマリ席」のお客さんはもちろん、同じ会場にいた全員にとって、忘れられない思い出になること間違いありません。

大盛り上がりのなか「大津場所」閉幕です。

湖国の期待を背負う、滋賀県出身の力士にインタビュー

豪ノ湖

滋賀県出身の2人の力士に、インタビューすることができました。

豪ノ湖は埼玉県の高校を卒業したばかり。近江八幡市出身で武隈(たけくま)部屋に所属。思いきりの良さが持ち味の19歳です。

「思いっきりやっていいというのが、相撲の魅力ですね。もともとは遊びで始めた相撲だったんですが、わんぱく相撲の1回戦で、自分より小さい相手に負けてしまったことが悔しくて。小学6年生から地元の相撲クラブに入って練習に打ち込みました」。中学では、校長先生にかけあって相撲部を作ってもらったほどの熱の入れようで、その後、高校横綱にもなりました。
これからは、地道に一番一番、集中して、勝っていきたいと、意気込みを語ってくれた豪ノ湖。

11月に行われる九州場所後には、髪が伸びきって、”まげ”が結えるようになるとか。若手有力株、豪ノ湖に注目です。

鳰の湖

続いて、大津市出身の鳰の湖です。北の湖部屋に入門。現在は、山響(やまひびき)部屋に所属しています。押しを得意とし、最高位は前頭十六枚目。

「相撲を始めたきっかけは、相撲好きだった家族を喜ばせたい気持ちからの親孝行ですね。相撲は強くなったらなった分だけ楽しいし、勉強もさせてもらえる。師匠の北の湖親方に出会えたことが、相撲をやっていてよかったと思うことです。四股名は大津市の三井寺さんで命名していただいたので、滋賀に帰ってきたら挨拶に伺うのが恒例です」。

十両、幕内を経験した実力派。巡業会場でも、地元の声援を一身に受けます。

「滋賀県の皆さんに応援していただいて、今がある。今、頑張れているのは、その力がすごく大きいです」。あらためてその思いを強くした大津場所。この先もまだまだ頑張りたい、と決意を新たにしていました。

日本の国技「相撲」の魅力

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厳しい勝負を勝ち抜くために、切磋琢磨しあう力士の世界に触れられる「大相撲巡業」。

“推し”力士に会いに行くのもよし、相撲の世界を感じるのでもよし、いろんな楽しみ方ができます。滋賀での次の巡業もそう遠くないかもしれません。ぜひ、機会があれば「大相撲巡業」に行ってみてはいかがでしょう。

(文・川島圭/撮影・辻田新也)

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